「もう卒業かー」
今日で何度目だろうか、この言葉を聞くのは。
いや、ここ1カ月前からこの言葉は、この教室のみならず、3年のいる階で飽きるほど聞く事が出来た。
それも、今日で終わり。だって今日は、
「打ち上げ行く人、手え挙げてー」
3年最後の日だから。
「ホームルームでもう終わりなんて、信じらんねーよな」
「ね。早かったね」
後ろの席の男子と、他愛もない話をする。
卒様式は、長かった。本当に、長かった。卒業証書授与なんて、危うく自分が呼ばれる時も眠りこけているところだったから。
それでも、まだ鼻をすすっている隣の女子に「寂しいね」なんて言っている。
この学校を卒業してしまう事よりも、新学期にまた友達を作るのに悪戦苦闘しそうな事の方が、何倍も嫌だった。
私は人見知り激しいから、自分から人に話しかけるには結構、勇気がいる。今年は友達と同じクラスだったから、彼女を通じてクラスメートと打ち解けていった。
けど、来年からは自分の力でそれをしなければならない。もちろん、それが普通だし、今までもそうやって何とかやって来たのだから、今の状況に甘えていたつもりはなかったのだけれど。
ふと、彼女は、おしょーさんは、打ち上げに行くのか気になって、私は彼女のいる方を見てみた。
教室の端の輪の中に、おしょーさんはいた。
「そんなところにいないで、こっち来て話そーよ!」
輪の中心にいる子が、私を見つけて手招きした。
「ね、ね! おしょーさんが平井先生にお弁当作ってたんだって!」
中心で席に座っている子が、目を輝かせて話しかけてきた。
初耳だなー。何でまた平井なんかに? って言うか、受け取るなよ。一応、教師なんだから。
おしょーさんは、不敵に笑みを浮かべている。
「どうせなら、2年の内から渡せば良かったんだけどね。反応が出るまであと1ヵ月はかかりそう」
反応……?
「弁当に何をした?」
おしょーさんの隣に立っている男子が、彼女の肩を掴んだ。
「残念ね……」
おしょーさんは、宙を仰ぎ見ている。
「ちょっ、おしょーさん!?」
「弁当に何をしたの!?」
「毒か!? 呪いか!? 悪霊か!?」
私は、心の中でこっそりと呟いた。
ありがとう、おしょーさん。最後に良い思い出が出来たよ。
って。

