色素の薄い、色白の肌。決して染めてはいない、自然な赤みを帯びた茶色の髪。
まだ着こなせていない真っ黒なセーラー服を着た、彼女。
相変わらず人見知りの激しい彼女は、しきりに周りをキョロキョロ見ては、自分の座っている机に目を落とし、少し伸びた爪をいじる行為を繰り返している。
そう言えば、1年前も同じ事をしていたな。
彼女と初めて会ったのは、1年の4月。入学式の終わった教室で、ちょうど彼女を見つけた。
“落ち着きのない子”。それが、僕の第一印象。
でも、その小動物みたいな動作が可愛くて。僕は一目で恋に落ちた。一目惚れってやつだ。
黒ゴムで2つに束ねていた髪は下ろされ、セミロングの少し大人になった、彼女。
それでも、相変わらず幼さも残る、彼女。
結局、去年は話せず仕舞いだった。
だけど、今は違う。少し自信を持てた今の僕なら、話しかける事だって出来るはず。
彼女が、席を立った。
今がチャンスだ。話しかけろ、僕!
「鈴原さん!」
1年前は僕より背の高かった、彼女。その彼女が、今は僕を少し見上げている。
細身で華奢な彼女は、首を傾げて上目遣いで僕を見つめている。
「同じクラスなんて知らなかったよ」
ちょっとわざとらしかったかな?
でも、彼女はにっこりと笑って、僕の前まで来てくれた。
「ホントだね。知らない人ばっかで緊張してたんだあ」
少し困った顔で微笑む彼女に、僕は胸の高鳴りを抑える事が出来なかった。
「それじゃあ」
「うん。バイバイ」
もう限界だ。あの、彼女に。鈴原 彩に、手を振られている。
僕は奇声を上げながら廊下を疾走した。
一方、彼女、鈴原 彩は……。
「珍しい奴と話してるじゃない」
後ろからポンッと肩に手を乗せられ、彩は振り返る。
顎のラインで軽く切り整えられた黒髪。丸く大きな眼鏡から覗く真っ黒な瞳は、彩とそう位置が変わらない。
彼女のその顔を確認した彩は、パアッと表情を明るくさせた。
「おしょーさん!」
今まで不安そうな表情だった彩は、もうそこにはいなかった。彩は、縋るように彼女に詰め寄る。
「もう、聞いてよお。知ってる人誰もいないんだよ。おしょーさんトコは?」
「え? 私もこのクラスだけど」
怪訝そうに眉間に皺を寄せるおしょーさんに、彩は目を丸くした。
「クラス分け。貼り出されてたでしょ?」
「自分のしか見てないもん」
呆然と呟く彩に、おしょーさんはため息を吐く。
「出席番号、私の2つ後でしょうが」
「え? そうなの?」
未だにキョトンとしている彩に、おしょーさんは更にため息を吐いた。
その態度にムッとした彩は、上目遣いでおしょーを睨む。が、あまり威厳はなかった。
「おかっぱに眼鏡は1組って相場が決まってるの!」
「それ、かなり偏見入ってるよ」
そして、またまたため息を吐くおしょーさんに、彩は機嫌を損ねていた。
しかし、ある事を思い出し、ぽわっと緩い表情で首を傾げた。
「さっき話してた人、誰か分かる? 同じクラスだねって言ってたんだけど……。小学校の時の人かな?」
今度はおしょーさんが目を丸くした。
「誰って、宮村 悟でしょ? 去年同じクラスだった」
「え!? ウソ!」
明らかな苦笑いに、おしょーさんも釣られて口元を歪める。
「全然覚えてないや」
「太木は、覚えてる?」
「うん。あの太った人でしょ?」
「そいつといつも一緒にいた奴」
「ああ!」
突然、彩は晴れ晴れとした表情になった。
「あの太木といつも18禁アニメの話してた奴か!」

