ウラゲッチョ!
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おしょーさん
CLASS6:最初にして最大の難関

「鈴原さん!」
 意を決して、ボクは彼女に話しかける。
 プリント片手に振り返った彼女は……ああ、今日も可愛い!
「保健委員、大変そうだね」
 保健委員に自ら立候補した彼女は、体育祭を目前に、休み時間を忙しそうに駆けずり回っていた。
「救護係どころか掃除までかけ持ちだからねー。ま、体育委員に比べれば、まだマシなんだけどね」
 ちょっと困ったような顔で笑う彼女が……うわ、ホントに可愛い。
 この、ちょっと首を傾げるのがさあ。良いねえ。この右35度!
「……村山君?」
 やばい。つい、妄想してた。
 ボクは、不思議そうな顔をした彼女に呼ばれて、やっと我に返った。
 そんなボクを特に気にする風でもなく、彼女はふわっと微笑んだ。
「村山君こそ写真、大変そうだね」
 そこで、ボクの頭は一瞬だけ止まった。
 村山君……?
 嫌な予感が、とんでもなく嫌な予感が、する。
「あの、宮村なんだけど……」
 その瞬間。彼女は、分かりやすすぎるほど頬を引きつらせて、固まった。物の見事に、固まった。
「ごめん! 名前覚えるの苦手でさ。宮村君ね! うん、覚えた!」
 そう言って、彼女は逃げるように教室を出て行ってしまった。
 ちょっとショックだったけど、これで誰よりも先に顔と名前を覚えて貰えたと、思う。

 そう、思ってたんだけどな……。
 彼女が、アルバム委員の女子と話をしていた。
 そいつは結構ギャルの入った奴で、そんな奴とも話すのか、と意外に思っていた。
 何やら、そのギャル女は笑いながらこっちを指差している。
 何だよ一体。
 そして、手を合わせて彼女に頭を下げると、そいつはどこかに言ってしまった。
 って、彼女がこっちに来るよ!
「どうしたの?」
 ちょっと声が引っくり返っちゃったかな。
 彼女は彼女で、何故か少し緊張しているようだった。
「あのね、梅宮君」
 思わず、体が傾く。
「違う! 三村君!」
 不安そうな顔で自信満々に言い切らないで下さい。
「そうだ! 木村君だ!」
 そのままボクは、机の上に突っ伏した。
「宮村ね……」
「ごめん! ほんっとごめん!!」
 真剣なのが余計に傷つくな。
 でも、何か慌てる鈴原さんって、可愛いかも。
「次に呼ばれるのが楽しみだなー」
 にやけ顔も、本音も隠さずに、言ってみた。
「もう、意地悪しないでよー」
 少しムッとしたような顔も、可愛い。
 惚れた弱みって、こういう事なのかな。

 そうしていく中で、彼女と打ち解けていける事を喜んでいたんでけれども。
「あ、ねえねえ。さっき小林さんが、体育祭の写真の事で話したいって言ってたんだけど……」
「写真部、頑張ってる? さっき広報の人が、写真使いたいって言ってたんだけど……」
 それ以来、彼女はボクを名前で呼ぶ事は一切なくなった。
「あ……。男子ってさ、どんな色なら着れる? クラスTシャツ作るのにさ、訊いて欲しいって言われて……」
 何が何でも、名前に触れなくなった。

 間違ってても、良いです。
 君なら、全く構わないです。
 むしろ、反応を見て喜んでます、ボク。
 だから。だから、せめて名前で呼びかけて下さい!

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